2012 年 21 巻 2 号 p. 101-104
母乳は,タンパク質など乳児に必要なほとんどすべての栄養素を含んでおり,乳児は母乳のみで成長することができる。母乳中のタンパク質などの栄養素の含有量は個人差が大きく,さらに授乳時期などにより大きく変動する。しかし,既存のタンパク質量の測定法では,多量の母乳試料が必要であり,手技が煩雑で測定結果を得るまでに長い時間が必要であるため,個人の母乳中のタンパク質量を随時測定することはかなり困難である。血清成分分析に使われている方法にドライケミストリー法がある。この測定法は,タンパク質など数項目を十数分で測定することが可能である。この定量法が母乳中のタンパク質量の測定に応用できれば微量の試料で迅速かつ簡便な測定が可能になると考えられる。以上より,ドライケミストリー法の母乳中のタンパク質量の微量・短時間測定法における有用性を検討するために,64検体の母乳中のタンパク質量をドライケミストリー法およびケルダール法により定量し比較検討した。ドライケミストリー法とケルダール法により測定したタンパク質量間に強い相関関係が認められた(y=0.9267x+0.5421, r=0.968, p<O.05)ことから,ドライケミストリー法は母乳中のタンパク質量の測定法として有用であった。