20~50歳代の女性看護師19名を対象として,電動ベッドにおいて患者の上半身を挙上する時に生じる圧迫やずれを解放するための援助である「背抜き」を2回,1回は素手で,もう1回はグローブを装着させて実施させた。そして,各々の背抜き時における看護師の左右の脊柱起立筋,左右の大腿二頭筋の筋活動を連続測定するとともに,看護師が身体に負担を感じた部位および身体への負担感,患者の身体の感覚評価を調べた。
筋活動量は,左脊柱起立筋と右大腿二頭筋において,素手で行う方がグローブ装着時より有意に大きかった。また,看護師の身体への負担感において,患者の身体の重さの体感と疲労感は,素手の方がグローブ装着より有意に高かった。素手の方がグローブ装着より有意に身体に負担を感じた部位は,右肩前面,右大腿前面,右大腿後面,右下腿前面,右下腿後面,左下腿後面,腰部であった。
以上より,背抜きにおいては素手で身体を起こす方がグローブを用いた方法より看護師の身体的負担が大きいことが明らかになった。しかし,患者の身体の感覚評価では,素手の方がグローブ装着時より圧迫感やひっぱられ感は低値を示し,身体が楽になったかについては有意に高値を示した。