日本健康医学会雑誌
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第29回日本健康医学会総会における特別講演のまとめ
大気環境と健康
—日本における経験と世界の現状—
島 正之
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2020 年 29 巻 2 号 p. 122-129

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抄録

わが国では高度経済成長期に多くの工業都市で二酸化硫黄(SO2)などによる大気汚染が社会問題となり,四日市喘息に代表される深刻な健康被害が発生した。こうした大気汚染の健康影響を評価するために多くの疫学研究が実施され,その知見は大気汚染防止対策を進める上で重要な役割を果たした。種々の大気汚染防止対策の効果により,1970年以降は工場に由来する大気汚染は改善したが,代わって自動車交通量の増加に伴って自動車排出ガスへの曝露による喘息の増加などの健康影響が問題となった。これに対しても,自動車NOx・PM法に基づく自動車排出ガス規制が進められ,改善傾向が認められている。近年は,微小粒子状物質(PM2.5)及び光化学オキシダント(主にオゾン)による大気汚染が問題となっており,人に対して呼吸器・循環器系だけでなく様々な健康影響を与えることが懸念されている。これらの汚染物質は大気中で二次的に生成されるものや越境汚染に由来するものなど,発生源が多様であり,広域的な汚染を引き起こしている。現在の大気汚染は地域的な問題ではなく,地球規模の問題となっており,改善するためには国際的な取り組みが必要である。

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