2020 年 29 巻 3 号 p. 319-326
本研究の目的は,ホームホスピス入居者のQuality of Life(QOL)を明らかにすることである。ホームホスピスとは,ホスピスの理念に沿って,あらゆる疾患や障碍を有する人を対象に,年齢や制度を問わず最期まで尊厳をもってともに暮らす「家」である。5か所のホームホスピスに入居している70歳代から90歳代の男性 2名,女性6名を対象に,個人の生活の質評価法─直接的重み付け法─(Schedule for the Evaluation of Individual Quality of Life a direct weighting procedure for Quality of Life domains:SEIQoL-DW)に基づいて主観的QOLを評価した。入居者の語りから各々が大切にしているものの手がかりとなるCUEを確認し,カテゴリーに分類した。その結果,家族の存在,環境,スタッフとの関係,培った財産,身体の変化,精神の安寧,同居人との関係,趣味/活動の8つのカテゴリーが分類された。8つのカテゴリーの中で,レベル(満足度)は【趣味/活動】が80.4±18.3と最も高く,次いで【家族の存在】が72.5±42.1,【環境】が66.0±40.7であった。また,重要性を示す重み付けは【家族の存在】が18.8±18.8と最も高く,次いで【環境】14.4±9.5,【趣味/活動】13.2±7.5であった。各入居者のSEIQoL-indexの平均値(mean±SD)は86.5±25.8で,中央値は87.7であった。ホームホスピス入居者は,自由度の高い環境で生活をしていることから主観的QOLを満たしていることが推測された。そして,ホームホスピスが地域密着型の包括的ケアシステムのリソースとして重要な役割を果たしていることが示唆された。