2021 年 29 巻 4 号 p. 373-380
本研究は,特定機能病院の退院支援において,病棟看護師はどのような看護実践を行っているのか明らかにすることを目的とした。
九州内の一特定機能病院に勤務する病棟看護師6名を対象に半構成的面接を実施し,退院支援における看護実践について質的内容分析を行った。
特定機能病院の病棟看護師が行う退院支援は,6つのカテゴリーに集約された。急性増悪で入院し,緊急・重篤な状態にある患者に対し,まずは医師主導の治療を積極的に補助し,不安定な状況にある患者の【回復の兆しの見極め】を行っていた。回復が見込める状況を確認できると【生活者としての回復の見極め】,【生活者としての環境の調整】,【医療者間の患者認識の調整】,【患者・家族の対処能力の見極め】を通して退院支援に努め,患者・家族へ繰り返し関わりながら,退院に向けた問題点を整理し【包括的マネジメントによる患者・家族の意思決定支援】を行っていた。
特定機能病院は,在院日数の短縮により退院支援の関わりも短期間で展開しているため,患者・家族を知るための時間的な限界がある。それゆえ,病棟看護師には多職種を繋げるマネジメント力が重要と考えられた。病棟看護師は,医療全体を俯瞰しながら退院支援の課題解決に向け,多職種の専門性を理解し医療倫理を共有し合い医療チームを形成していった。そして,多職種連携を進めて行くうえでリーダーシップを発揮しながら,患者・家族の包括的理解や医療者間の患者認識の調整に努めていた。
この病棟看護師のリーダーシップの発揮や包括的なマネジメントは,病棟看護師が持ち合わせる看護観や看護倫理観に基づく信念により,それが原動力になることで実践されたと考える。