2024 年 32 巻 4 号 p. 487-492
幼若ラットにおける鉄欠乏性貧血の発症と骨代謝回転との関係について,骨代謝マーカを用いて検討した。3週齢Wistar系雄ラット72匹を用い,正常食投与群(C群),鉄欠乏食投与群(D群),D群の摂取量に合わせて正常食を投与した制限給餌群(PF群)の3群に分けた。4週間の飼育観察を行い,1週毎に各群6匹のラットを解剖した。C群とPF群に比較し,D群のヘモグロビン濃度と肝臓中鉄濃度は1,2,3,4週目において有意に低値を示し,心臓重量は1,2,3,4週目において有意に高値を示した。血清中オステオカルシン濃度,尿中デオキシピリジノリン排泄量および大腿骨骨密度は,3,4週目において,C群とPF群に比較してD群で有意に低値を示した。これらの結果から,骨形成と骨吸収の低下は,鉄欠乏性貧血の発症より遅く出現する可能性が示唆された。