近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 100
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TFCC鏡視下縫合術に対する運動療法の検討
*平沢 良和山本 浩基宮本 定治沢田 潤上野 順也好井 覚藤尾 圭司
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キーワード: TFCC, 三角靭帯, 運動療法
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抄録

【はじめに】TFCC損傷は慢性手関節痛の原因の1つであり、その臨床的特徴は手関節尺側部の圧痛と運動時痛である.特に尺骨茎状突起付着部(fovea)の損傷による遠位橈尺関節(DRUJ)の不安定性が問題となり,当院では鏡視下縫合術が数多く施行されている.今回,TFCC鏡視下縫合術後の運動療法について検討し,考察をふまえ報告する.

【症例紹介】40歳男性.職業は弁護士.利き手は右.自転車走行中転倒し両手をつき受傷.他院にて3ヵ月間,投薬・装具療法施行するも疼痛緩解せず,当院紹介となる.主訴は左手関節尺側部痛で,動作時に強く出現し,DRUJの不安定性も認めた.関節可動域掌屈40度,背屈70度,回外40度,回内60度,握力17.4kgと著明な制限を認めた.

【手術所見】TFCCはtrampoline現象・floating現象陽性,Palmer分類1B損傷であった.foveaを新鮮化し,inside-out法で縫合.floating現象陰性となりDRUJ不安定性も改善した.

【運動療法】術後3週間はlong arm castにて前腕中間位で固定.4週目から自動運動を開始.前腕回旋運動はDRUJを安定位に保持し,肘関節最大屈曲位にて実施.特に回外運動を優先した.7週目から他動運動を開始.回外運動は最終域での回旋運動の誘導を,回内運動は橈骨の掌側偏位を促した.10週目から手関節背屈筋・握力練習を開始.術後3ヵ月で重量物把持や手をつくなどの動作を許可し,重労働やスポーツ復帰も許可した.

【結果】Cooneyらの評価表による臨床成績は115点であった.疼痛は重労働やスポーツでたまに出現する程度であった.関節可動域掌屈70度,背屈70度,回外85度,回内80度,握力30.0kgと改善した.ulnocarpal stress test,ballottement testは陰性であった.

【考察】TFCCは手関節尺側に存在し,尺側部での緩衝作用とDRUJの安定作用を有する.三角靭帯は尺骨小窩から起始し,橈骨尺骨切痕に停止し,中村は真の橈尺靭帯と述べ,HaugstvedtらもDRUJの安定性に寄与すると報告している.縫合部はbone-tendon unitと瘢痕形成にて癒合すると推察され,抗張力の増す4週目から自動運動,7週目から他動運動を開始する.また中村らはMRIを用いた解析で,最大回外位から回内位45度までは橈骨と尺骨はほぼ相対的回旋運動,最大回内位で橈骨の掌側偏位が生じると述べている.前腕回旋運動の運動軸は尺骨頭の中心(fovea)で,同部位で縫合されることから,回外運動は縫合部でのストレスが少ないと考え,回外運動を優先して行い,7週目から回内運動を積極的に開始した.術後,特にDRUJの不安定性を認めず,良好な関節可動域を獲得できた.今後さらに症例数を増やして検討していく予定である.

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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