近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 69
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ダイナミックストレッチングの実施回数について
-筋力発揮と筋の柔軟性に及ぼす影響-
*岡山 裕美松岡 雅一山内 仁大工谷 新一小澤 拓也
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抄録

【はじめに】
土黒1) はダイナミックストレッチング(以下、DS)の回数を10~15回が目安と述べている。本研究では、膝関節屈曲および伸展運動のDSが大腿四頭筋の等速性筋力と下肢伸展挙上(以下、SLR)角度に及ぼす影響とDSの実施回数について検討した。
【対象と方法】
対象は健常男性18名の利き足18肢とした。対象には本研究の趣旨を説明し同意を得た。対象を無作為に6名ずつ3群に分け、それぞれDSの実施回数を10回、20回および30回とした。DSの肢位は立位で足関節起立矯正板(MINATO)に非利き足と体幹を固定し、両上肢は手すりを把持させた。DSの方法は安静立位を開始肢位とし、股関節・膝関節を90°屈曲後に膝関節を伸展する動作を1動作とした。次に膝関節伸展位から90°屈曲後に股関節・膝関節を伸展して立位に戻る動作を1動作とした。これら2動作に対しメトロノームを用いて、1Hzのリズムにて計2秒で行った。DS実施前後にサイベックスノルム(ヘンリージャパン)を用い、大腿四頭筋の角速度60deg/secにおける等速性筋力を測定し、ピークトルク体重比を算出した。またハムストリングスの柔軟性の指標として、SLR角度をDS実施前後に測定した。統計学的分析は、各群におけるDS実施前後のピークトルク体重比とSLR角度を対応のあるt検定で検討した。DS実施回数の違いによるDS実施前後のピークトルク体重比とSLR角度の増加率の比較は、1元配置分散分析で統計処理した後に、FisherのPSLDによる多重比較の検定を実施した。
【結果】
ピークトルク体重比は、全ての群においてDS実施後で有意に高値を示した(p<0.01)。また、10回群、20回群、30回群の各増加率は2.7±1.7_%_、9.1±6.3_%_、8.1±2.9 _%_であり、10・20回群間では20回群が有意に高値を示した (p<0.01) 。SLR角度は、30回群においてDS実施後で有意に高値を示した(p<0.01)。また、10回群、20回群、30回群の各増加率は1.4±5.3_%_、4.7±5.6_%_、9.4±6.9_%_で各群間に有意差を認めなかった。
【考察】
山口ら2)はDSが筋力発揮と筋の柔軟性に及ぼす影響として拮抗筋の活動が抑制され主動作筋の筋力が発揮しやすい状態になると述べている。今回、実施後にピークトルク体重比が高値を示したのは、拮抗筋であるハムストリングスの活動が抑制され主動作筋である大腿四頭筋の筋力が発揮しやすい状態になったと考えられた。実施回数の違いによる各群の比較では、運動範囲や姿勢、ターゲットとする筋を設定しても効果的な回数を導き出すことは出来なかった。
【参考文献】
1)土黒秀則:ウォームアップ概論.トレーニングジャーナル25(7): 55-58,2003.
2)山口太一,石井好二郎:ストレッチングの方法と効果.からだの科学245: 24-31,2006.

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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