近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 14
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肩関節周囲炎の一症例
*吉塚 瞳小野 志操澁谷 秀幸
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キーワード: 肩甲上腕関節, 肩甲骨, 拘縮
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抄録

【はじめに】肩関節の運動は肩甲上腕関節(以下GH jt)と肩甲胸郭関節の協調した運動により成り立っている.今回,GH jtの拘縮によりX線画像上において肩甲骨のmal alignmentを呈し,肩関節挙時に肩甲骨上腕リズムに異常をきたしていた症例を経験した.理学療法はGH jtのアプローチのみを行った結果,拘縮が除去されることにより肩甲骨のmal alignmentも改善した.このことによりGH jt障害が肩甲骨における静的アライメントへの影響を再確認したのでアプローチと共に報告する.なお,症例に対し発表の目的を説明し,同意を得た.
【症例紹介】50歳代 女性 左利き.誘因もなく疼痛出現.経過観察していたが疼痛増悪し,可動域制限著明となったため,発症1ヶ月後、当院整形外科受診.左肩関節周囲炎と診断.同日,理学療法開始.
【初診時所見】ROM flex 165°/80° ext 55°/ 10° abd 165°/80° add 40°/ 0° h-add 30°/-5° I/R 1st 70° 2nd 0° 3rd 0° E/R 1st 0° 2nd 0° 3rd 0°※2nd、3rd 肢位 完全に取れず 右肩関節制限(-)
大円筋・小円筋・大胸筋・肩甲下筋・肩甲挙筋・僧帽筋上部線維 短縮(+)
SGHL、MGHL、AIGHL、PIGHL、CHL 短縮(+)
棘上筋・棘下筋 筋硬結 圧痛(+)
結髪 頭部側面 結帯 Th2-3/仙骨
夜間痛(+)
LVA:48.0°/68.3° GHA:3.9°/6.4°
【理学療法・治療経過】棘上筋、棘下筋のリラクゼーション、短縮筋のストレッチ、関節包靱帯のストレッチを中心に理学療法開始.週3回外来フォロー.屈曲角度は徐々に改善したが、内外旋制限残存、結帯動作L4-5レベルで止まっていた。圧痛所見は無く、end feelも非常にtightだったため、後下方関節包靱帯伸張目的にstooping-exを追加.その後、結帯動作、内外旋角度とも増加.ADL動作すべて自立となったためRH終了.
【最終時所見】ROM flex 165°/170° ext55°/ 40° abd 165°/170° add40°/ 20° h-add 30°/15° I/R 1st 80° 2nd 25° 3rd 5° E/R 1st 20° 2nd 60° 3rd 75°〈BR〉結髪 頭部中央 結帯 Th3/Th9
LVA:48.0°/43.3° GHA:3.9°/3.6°
【考察】 本症例の治療において,棘上筋,棘下筋の筋スパズムの除去,後下方組織の伸張を目的に理学療法を実施した.実施後は比較的良好な屈曲可動域と内外旋角度を獲得した.拘縮除去後のX線画像上ではLVAが著明に改善し,肩甲骨の静的アライメントが修正されたことを認めた.肩関節の運動は肩甲骨と上腕骨の位置関係が良好な状態ではじめて回旋筋腱板が正常に働く.肩甲上腕関節に拘縮ができたことにより肩甲骨と上腕骨の位置関係が崩れ,それを代償するために肩甲骨がmal alignmentを呈すると考えられる.今回はX線画像上での静的アライメントの計測のみであったが,挙上時の肩甲上腕リズムも同様なことが言えると考えられる.評価の際も肩甲上腕関節の拘縮を除去したうえで再度,肩甲胸郭関節の評価をするべきと思われる.

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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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