近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 21
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ダイナミックストレッチングの実施回数について(第2報)
疲労が筋力発揮に及ぼす影響
*岡山 裕美山内 仁大工谷 新一
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抄録

【はじめに】
 筆者らは先行研究でダイナミックストレッチング(以下、DS)の実施回数が筋力と柔軟性に及ぼす影響について検討し、DS実施回数によりピークトルクが低下することを報告した。この要因を明らかにするには、DSが筋活動に及ぼす量的・質的変化の検討が必要であり、本研究では、DS実施回数の違いによる股関節屈筋群の等速性筋力と表面筋電図の関係について検討した。
【対象と方法】
 対象は、本件の趣旨を説明し同意を得た健常男性5名とした。DSは安静立位を開始肢位とし、1Hzのリズムで一側の股関節・膝関節を90度まで挙げ降ろしさせ再び立位に戻る動作とした。DSの回数は10・20・30回とした。DS前後にBIODEX System 3(BIODEX MEDICAL Inc.)を用いて、角速度300deg/secでの等速性運動を3回行い、股関節屈曲ピークトルクを計測した。また、ピークトルクの計測と同期して大腿直筋(RF)、大腿筋膜張筋(TFL)、長内転筋(AdL)の表面筋電図をMyosystem1400(Noraxon)により記録した。得られた波形からピークトルク発揮時を中心とした0.05秒間の筋電図積分値(IEMG)と中間周波数(MdPF)およびピークトルク発揮時点のMdPFを算出した。なお、MdPFの算出には連続ウェーブレット変換とフーリエ変換の双方を用いた。得られた結果から、DS前後における各指標の差を検討した。また、連続ウェーブレット変換により得られるスケイログラムの様相についても検討した。
【結果】
 ピークトルクは20回のDS後にのみ有意に増大した。IEMGとMdPFには有意な差は認められなかった。一方、スケイログラムの様相から20回のDS後には、4名においてRFの中周波領域と高周波領域での活動減少がみられ、2名ではTFLの中周波領域と高周波領域での活動減少がみられた。また、2名ではRFとTFLの中周波領域と高周波領域での活動増大がみられ、1名では同様にAdLの活動増大がみられた。
【考察】
 本研究では、20回のDS後に有意なピークトルクの増大がみられたものの、IEMGに差は認められなかった。したがって、20回のDS後にみられたトルク発揮における促通効果には、動員される筋線維の種類の変化などの質的影響があったものと推察された。しかし、MdPFには差が認められなかったため、スケイログラムの様相をすべての被験者について検討した。その結果、5名中4名でRFの中周波領域と高周波領域での活動減少が観察され、その他にも被験者ごとに異なる様相を呈していた。これより、20回のDS後にみられたピークトルクの増大にはMdPFでは反映されない質的な変化があったものと考えられた。また、今回選択した等速性運動は高速度に分類されるため、低周波領域の活動は動員されにくいことも本結果に影響を与えた一因と考えられた。本結果から、DS後のトルク変化には筋疲労の影響よりも筋力発揮における質的な影響があることが示唆された。

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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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