近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 22
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Functional Reach Testの影響因子の検討
身長及び重心動揺計測の結果における検証
*村上 加緒理山口 織江梅木  正篤
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抄録

【目的】 Functional Reach Test(以下FRT)距離は、年齢・性別・身長・COPの前後長等に影響されると言われているが、否定的な報告も多い。今回の研究では直立時・直立前傾時・最大リーチ時の重心動揺測定を行い、最大リーチ距離と重心位置及び身長との関係を検証した。
【対象及び方法】 対象は本研究に同意を得た健常女性21名とした。対象年齢は平均26.2±6.8歳であった。
身長は金属身長計(アイズワン株式会社製YS-OA)を用いて測定した。
FRT距離は、被験者を側方に設けたホワイトボード(200cm×240cm)と平行な方向に、裸足で足位は閉脚位に直立させて行った。開始肢位は両肩関節90°屈曲位とし、開始肢位と最大リーチ位での、第三指尖を通る床への垂直線の距離を3回測定し、平均値を求めた。
重心動揺計測には重心動揺解析システム(アニマ社製G-620 )を用いた。計測時の足位は、閉脚位とし、基準点は両外果を結ぶ線の中点と一致させた。測定肢位は直立位、両母趾球の間に重心が落ちるよう指示した直立前傾位、両上肢を最大限前方に伸ばすよう指示した最大リーチ位の3肢位にて動揺検査を行った。各肢位における計測時間は30秒間とし、総軌跡長、外周面積、直立位のY軸中心変位を求めた。統計学的処理として、FRT距離と外周面積は、Spearman'sの順位相関係数を用い、最大リーチ距離と身長・総軌跡長・Y軸中心変位はPearsonの積率相関係数を算出し、いずれも有意水準は5%未満とした。
【結果】 FRT距離の平均は34.4±9.0cmであった。外周面積の平均は、直立時2.32±3.5cm、前傾時2.99±5.67cm、リーチ時6.14±5.99cmであり、FRT距離と直立時の外周面積(rs=0.59;P<0.01 )、最大リーチ時の外周面積(rs=0.47;P<0.05 )には相関を認めた。身長の平均は、160.9±10.1cmであり、FRT距離と身長には相関が見られなかった。総軌跡長の平均は、直立時で32.83±16.52cm、前傾時で44.25±27.46cm、最大リーチ時で66.0±30.78cmであり、FRT距離と総軌跡長の間には相関は見られなかった。Y軸中心変位の平均は、直立時4.49±2.98_cm_、前傾時10.22±2.98cm、最大リーチ時10.64±3.5cmであり、FRT距離と直立時のY軸中心変位のみ負の相関を認めた(r=-0.48;P<0.05 )。
【考察】 先行研究では、身長がFRT距離に影響をするという報告は多数あるが、今回の結果での相関は認めなかった。FRT距離は直立時と最大リーチ時の外周面積、直立時のY軸中心変位と相関が見られた。これは動的立位バランスの指標とされているFRTが、直立位の影響を受けていると考えられた。

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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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