近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 3
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片麻痺者における歩行の非対称性や麻痺側,非麻痺側の推進力が歩行機能に与える影響
*泉 圭輔大畑 光司山田 実佐久間 香
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キーワード: 片麻痺, 歩行, 床反力
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抄録

【目的】 脳損傷後の片麻痺者において,麻痺側の支持性が低下は,歩行の非対称性を生じさせる。しかし,この非対称性が歩行速度の低下と関連するかどうかについては明確ではない。特に麻痺側の支持性低下は,麻痺側による推進力(水平方向へ重心を移動させる力)の低下につながると考えられるが,片麻痺者における麻痺側,非麻痺側の推進力が歩行機能に与える影響については明確ではない。よって,本研究の目的は,片麻痺者における荷重量の非対称性と両側の推進力が,歩行機能に与える影響について明確にすることとした。 【方法】 対象は脳損傷後6か月以上経過した片麻痺者15名(50.7±10.6歳)とした。測定には床反力計を用い,快適歩行速度における麻痺側,非麻痺側の立脚時間,歩行荷重量(床反力垂直分力の平均値),歩行荷重総量(床反力垂直分力グラフ下面積),推進力(床反力水平分力の最大値)を算出した。また,それぞれの値の麻痺側/非麻痺側比を算出した。歩行機能としては,10m歩行にて,歩行速度,歩数を算出した。統計解析は,麻痺側と非麻痺側の差の検定には対応のあるt検定を,各々の相関にはスピアマンの順位相関係数,偏相関係数を用いた。 【結果】 麻痺側の立脚時間,歩行荷重量,歩行荷重総量,推進力は,非麻痺側と比べ有意に低下していた(p<0.01)。また,歩行荷重量の麻痺側/非麻痺側比と歩数(r=-0.593)及び歩行速度(r=0.700)との間に有意な相関がみられた。さらに,歩行速度と非麻痺側推進力(r=0.754)および麻痺側推進力(r=0.561)との間に有意な相関がみられた。しかし,麻痺側推進力で調整した場合,歩行速度と非麻痺側推進力との間に偏相関がみられた(r=0.748)が,非麻痺側推進力で調整した場合,歩行速度と麻痺側推進力との間に有意な偏相関は認められなかった。 【考察】 歩行荷重量の麻痺側/非麻痺側比は歩行速度および歩数と相関を示したことから,床反力垂直分力の対称的な歩行であるほど歩行速度や歩幅が大きいことが示唆された。この理由としては,麻痺側の立脚期が安定し,反対側である非麻痺側の歩幅が増加させることができるため,結果的に歩行速度が増加したのではないかと考えられた。また,麻痺側では,垂直方向だけでなく,前後方向の支持性はさらに低いため,歩行の推進力においても非対称性が認められ,歩行速度と麻痺側,非麻痺側推進力に相関がみられた。さらに,それぞれで調整した場合,歩行速度と麻痺側推進力では相関が見られなくなり,非麻痺側推進力とのみ有意な相関を示すようになった。このことは,片麻痺者の歩行速度が,非麻痺側推進力により強く影響を受けていることを示唆している。このことから,片麻痺者における歩行の推進力は,非麻痺側で補える推進力の大きさと関係が深く,これが歩行速度を決定する重要な因子であると考えられた。よって,片麻痺者の歩行速度は,垂直荷重という面では歩行荷重量の非対称性,つまり,麻痺側の荷重量低下の影響を受け,水平方向への推進力という面では麻痺側のみでなく,非麻痺側による代償能力が重要である可能性が示唆された。

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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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