抄録
エノキタケのオイディアを用いて,4種の変異原による栄養要求性変異株の誘発と分離について検討を行った.UV照射による本菌のオイディアに対する突然変異で,生存率5%前後で最大変異率が得られ,この値は菌株により2〜4%を示した.さまざまな栄養要求性株が分離されたが,これらの株のかなりの数は継代培養において復帰変異を示した.本菌は,X線処理に対して高い耐性を示した.しかし,X線処理は通常の変異原処理で取得が困難な変異株を誘発する可能性が考察された.エノキタケに対する化学変異原処理では,NTG処理によりUV処理より多少高い4%程度の変異率が得られた.NTG処理の最大変異率は,生存率10%付近にあった.UV処理と比較して誘発される変異株の種類の違いは認められなかった.本菌に対するEMS処理は,再現性に乏しく,最適変異原処理条件は決定できなかった.