北日本病害虫研究会報
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リンゴ腐らん病, 特に秋季に発病した幹の病斑の病徴
長内 昌彦
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1993 年 1993 巻 44 号 p. 77-80

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抄録

秋季に発病したリンゴ腐らん病の幹の病斑は, 粗皮などの樹皮の枯死部に多かった。これらの病斑は, くすんだ橙~褐色を呈し, 樹皮の腐敗も浅く, 病原菌の分布は腐敗部と伸展した菌糸の部分に限られるなどの特徴を示した。春の病斑が, 腐敗が木質部まで達し, 病斑が水浸状に腐敗し, アルコール臭を帯び, 病斑の色は明るい橙色であることと異なっていた。病斑の腐敗状況および本病原菌の分離結果から, 秋季に発病した病斑は, 粗皮などの樹皮の枯死部に本病原菌が感染し, 樹皮の枯死部で菌糸化した後, 早いものでは秋季に菌糸が伸展し始めるものと考えられた。感染時期は, 本病原菌の潜伏期間を考えると発病当年の春かそれ以前であると考えられた。秋季に発病した病斑は, まず菌糸の状態で病斑から健全な樹皮の方向へ拡大し, その後木質部方向へ腐敗が始まり, 翌春には典型的な病斑になった。また, 冬期間も病斑の拡大はみられたが, 暖かい時期の病斑の拡大が早いことから, 拡大量の多少には気温が影響するものと考えられた。

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