北里大学一般教育紀要
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原著論文
多人種的バックグラウンドを持つ人々のアイデンティティーに対する言語の重要性(PartⅣ)
ブルックス ミキオ A.ブルックス デイビッド L.
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2018 年 23 巻 p. 63-74

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抄録

  本論文の目的は多人種 (multiracial)の人々にとって言語とアイデンティティーがどのように関連し、またどのような重要性を持つかを検討するための枠組みを確立することである。二言語使用者(bilingual)のアイデンティティーは他人との社会的交流、他人による自己カテゴリー化、そして他人の態度や視点の内面化の有無によって形成されると考えられる。多人種の人々、そして多言語使用者(multilingual)にとっての言語とアイデンティティーの結び付きの複雑さは、人類の様々な多様な生き方や経験なども包含し、その関係性はその個人個人の家族背景、住んでいるコミュニティー、社会的見識、身体的な特徴、そして言語の習得などの要因に大きく左右される。多人種的背景を持つ一個人の人生経験、自我、その人のアイデンティティー形成に影響を及ぼしたと思われる要因などは人それぞれによって異なる。人によっては自分のルーツである特定のグループに帰属していると思うと同時に、流動的なまたは状況によって変化をする特徴のアイデンティティーを持つ者もいることが予測される。多人種的背景を持つ一個人の複雑、多重的、且つ流動的なアイデンティティーの受け入れ行為とそれらの側面が内面でうまくバランスを保たれている状況は、必ずしもその個人が生まれ持って受け継いだ人種的、民族的、文化的な背景を全て平等、且つ均等な割合で受け入れていることを意味しない。言語とはアイデンティティーを象徴し、同時に社会的な交流の基盤でもある。またより広義においては、個人個人の人間関係や繋がりの度合い、そしてその個人の交流範囲などにも影響を及ぼす。さらに言語は教育の機会や場にも直接関連し、一個人の社会での活動範囲や、成功にも深く関与する。社会的なそして個人的なアイデンティティーを強く結びつける役割を担うことを踏まえ、言語は、多人種の人々のアイデンティティーに不可欠な要素として考えていくべきである。本稿が提示する新たなる枠組みが、教育に携わる者、為政者、子育てをする親などの新たなる視点の形成、及びその視野を広げることの一助になることを望んでいる。多人種的な背景を持つ個々人の複雑性や多重性がより理解され、また一人一人がありのまま受け入れられ、活躍できることを願ってやまない。

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