北里大学一般教育紀要
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原著論文
リベラル優生学のパラドックス ――ゲノム編集における遺伝的多様性をめぐって――
鵜澤 和彦
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2020 年 25 巻 p. 35-56

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抄録


 リベラル優生学は、将来生まれてくる子供の幸福のために、ヒト胚のゲノムを編集(改変)することを主張する。この改変の基準には、複数の段階が設けられているが、その究極の基準は、最﹅も﹅優﹅れ﹅た﹅遺伝的配列である。本稿は、この単一な基準が、むしろ人類の持続可能な生存を危うくする点を指摘し、リベラル優生学のパラドックスを明らかにする。なぜなら、最﹅善﹅の遺伝的配列は、まさに単一の秩序に収斂していく限り、生物種の持続可能性に不可欠な遺伝的多様性の減少ないしは消失につながるからである。筆者の考えによれば、リベラル優生学は、この最﹅善﹅の遺伝的配列(客観的価値)を追求する限り、その本来の理念と逆の結果をもたらすことになる。このパラドックスから、ヒト胚のゲノム編集技術に明確な制限基準を設けるべきことを結論として述べる。

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