2018 年 66 巻 12 号 p. 381-387
国際宇宙ステーション「きぼう」利用簡易曝露実験装置ExHAMを利用した炭素質ダストの宇宙曝露実験は,年老いた星周環境で凝縮したダストが星間空間に至り次世代の星形成活動に寄与するまでの過程で被る物性変化を調べることを目的とする試みである.本実験では,未同定赤外バンド担い手の同定に焦点をあて,実験室で合成するダストである膜状急冷炭素質物質をはじめとして,約30種の実験試料を1年間,国際宇宙ステーションの軌道環境に曝露し,曝露前後の物質の赤外分光特性や物性変化の調査を実施している.この記事では,本曝露実験の概要と進捗状況を示すとともに,主要な実験試料の1つである膜状急冷炭素質物質に焦点をあて,宇宙環境曝露実験前後での赤外線吸光スペクトルの変化に関する初期成果の一部を紹介する.