2019 年 67 巻 8 号 p. 279-285
近年の航空機システム開発における誘導制御則の性能評価にあたってはモンテカルロシミュレーション(MCS)が利用されるようになってきており,JAXAのD-SENDプロジェクト第2フェーズ試験(D-SEND#2)においても誘導制御則の設計要求の1つとしてMCSによるミッション成功率が設定された.しかし,システムの誤差モデルを適切に設定しなければ誤った性能評価につながることもある.実際にD-SEND#2第1回落下試験の誘導制御則設計に供した空力誤差モデルは過小評価されていたため,事前のMCSでは要求されたミッション成功率を達成していたものの,想定以上の空力誤差と安定余裕の不足により落下試験の失敗につながった.空力誤差モデルが適切であったならば,制御性能と安定性を両立できる誘導制御則をMCSにより効率的に設計できた可能性がある.本稿ではこれを検証するために,MCS並列計算システムを利用してD-SEND#2第1回落下試験の誘導制御則再設計を行った例について解説する.