2022 年 70 巻 1 号 p. 1-8
飛行試験は,開発中の航空機・装備品が設計通りの機能・性能を有することを確認する重要なプロセスである.一方,未検証の機体システムと非線形な物理現象,人間(テストパイロットやフライトテストエンジニア等)との相互作用を伴うため,飛行試験では解析や地上試験の結果から事前に予測しきれない「予期せぬ事象」がしばしば生じ,事故等の不安全事象に至る事例もある.このようなリスクを低減し飛行試験を安全に実施するために,飛行試験リスク管理プロセス及びその中核をなすリスク評価手法であるTest Hazard Analysis(THA)が世界の飛行試験業界で広く活用されている.本稿では,三菱航空機(株)が民間機開発における飛行試験リスク管理の事実上の世界標準であるFAA Order 4040.26Bに基づく国内初の実施例として構築した飛行試験リスク管理プロセス及びTHAについて紹介する.