2011 年 61 巻 2 号 p. 161-167
症例は59歳女性. 2006年9月の検診にて胸部異常影を指摘され, 近医を受診した. 胸部CTにて右中葉S4に結節影が認められ, 同年10月当院を紹介受診した. 気管支鏡検査にて肺腺癌と診断され当初cT1N1M0, stageIIAとして, 当院外科にて同年11月右中葉切除術 (ND2a) を施行した. 術後病理病期にてpT4N2M0, stageIIIBと診断し, 2007年1月よりカルボプラチン+ゲムシタビンにて全身化学療法が施行された. その後PET-CTにて多発肺内転移, 右鎖骨上リンパ節転移が認められ, EGFR 遺伝子変異陽性 (Exon 19 deletion) であり同年11月よりゲフィチニブの投与を開始した. その後PRが持続したが徐々にCEAの上昇を認め, 2009年5月のPET-CTにて右腋窩リンパ節転移, 右胸膜播種, 骨盤内への集積が認められ, 腹部エコー, 造影CT, MRIにて両側卵巣転移と考えられた. その後塩酸アムルビシン, ペメトレキセド, エルロチニブによる治療を施行したがPDとなり全身状態悪化にて死亡した. 肺癌卵巣転移は稀であり, 本症例は死亡後病理解剖も施行し文献的考察を加えて報告する.