客観的な診断バイオマーカーがなく, 問診だけで診断している精神科医療における喫緊の課題は各精神疾患の診断バイオマーカーを獲得することである. しかし, 世界中でたくさんの研究者が遺伝子解析やMRIなどの画像を用いた臨床マーカーの研究に凌ぎを削っているが, 他の研究者によって再確認されることがほとんどなく, 臨床的に有用な知見は得られていない.
この小論ではがんのバイオマーカー研究で始まり, 精神疾患のバイオマーカーの研究に従事し, 技術革新を目指してきた, 小生の研究の旅路を紹介する. 近赤外線スペクトロスコピーが種々の精神疾患のうつ症状の補助的診断法として厚生省から先進医療に承認されたことは大きな一歩であったが, 精神疾患患者の治療に本質的にかかわる分子マーカーの探索が必須である.