2019 年 69 巻 4 号 p. 329-334
症例は41歳,男性.呼吸器疾患の経過観察のCT検査で胃病変を偶然発見された.CT/MRI検査で胃噴門部小弯側に径40 mmの境界明瞭で内部造影効果のない嚢胞性腫瘤を指摘された.腫瘤は超音波内視鏡検査で胃壁筋層より連続したhypoechoic massとして認められ,術前診断として胃重複症を第一に考え,腹腔鏡下に手術治療を行った.病理組織学的検査所見では腫瘍内腔が多列円柱上皮で覆われた嚢胞性病変で胃固有筋層に連続した病変であり胃重複症と診断した.悪性所見は認められなかった.術後経過は良好で術後第9病日に退院した.胃重複症は稀な疾患で,さまざまな鑑別診断により術前診断が困難であることが多く,確定診断には特徴的な病理組織学的所見を要する.今回,腹腔鏡下に手術治療を行った胃重複症の1例を経験したので報告する.