北関東医学
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薬剤耐性因子
エールリッヒ賞受賞講演
三橋 進
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1981 年 31 巻 5 号 p. 305-315

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抄録
Paul Ehrlichは, 色素の細胞親和性に大きい差のあることを発見し, 病原微生物に特異的に結合する色素が得られれば, 治療剤として使うことが可能であろうという構想をもった.これが実験的化学療法の理論で, 新らしくつくられた研究室で実験を開始して間もなく, trypanrotとsalvarsanを発見した.この二つの薬剤の発見に従事した研究者が夫々志賀潔 (赤痢菌の発見者) 先生と秦佐八郎先生であったことは特記すべきである.
1929年 Alexander Flemingによるペニシリン (PC) の発見は, 偶然的であるとは申せ, まさに革命的な出来事であった.1943年に A.Waksmanによってストレプトマイシン (SM) が発見され, 結核菌を含めた多くの病原細菌に効くことが証明されるに及んで, PCの発見は極めて大きい意味をもつ出来事であったといわれる所以である.つまり吾々をとりまく空気, 水, 土壌の微生物が病原微生物に有効な物質一抗生物質を生産しているということが確信されたからである.その後驚く程のスピードで発見された抗生物質は医学の世界に大きい革命をもたらし, 1000年の医学史の中で最も輝やかしい時代を到来せしめたものといわれる.
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