北関東医学
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心臓粘液腫の臨床像と免疫組織化学所見
特にIL-6の発現について
梅山 茂
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1994 年 44 巻 5 号 p. 475-484

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抄録

最近16年間に経験した心臓粘液腫15例について, その臨床像と摘出した腫瘍の肉眼的, 免疫組織学的所見との関係を検討した.いずれの症例も, 心断層エコー検査で診断され, 心血管造影で確認, 腫瘍を摘出したものであり, 発生部位は, 左房14例, 左室1例であった.自覚症状としては動悸, 息切れなどの心機能障害を思わせる症状が多く, 過半数がNew York Heart Association (NYHA) の心機能分類でII~III度であった.腫瘍の大きさと心機能障害との問には有意な相関はなかった.塞栓症の合併は4例にみられ, その発生には粘液腫の大きさよりもその表面の形態が関連し, 塞栓症合併例では全例乳頭状あるいは分葉状であった.特記すべきは自己免疫疾患様の症候が高率に認められたことであり, 14例, 93%に認められた.腫瘍の免疫組織化学的検査では, 80%の高率にIL-6の発現が認められた.IL-6について従来の知見を勘案すると, 自己免疫疾患様の症候の出現に, IL-6が重要な役割を演じている可能性が考えられた.その他の間質系マーカーであるdesmin, vimentin, factor VIII, 神経内分泌のマーカーS-100, および上皮マーカーcytokeratin, non squamous epithelium (NSE) が陽性であり, これらの所見からは粘液腫が多分化能を有する未分化な間葉系細胞から発生する可能性も考えられた.

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