1997 年 47 巻 6 号 p. 443-447
右上葉より気管に及ぶ扁平上皮癌に対し, 気管分岐部を含めて右上葉を切除し, 分岐部再建を行い良好な結果を得た症例を経験した.気管分岐部再建に際しては, ECMO (Extracorporeal membrane oxygenation) を使用し, 術野挿管による換気を併用した.気管分岐部再建はtwo stomaとし, 4-0モノフイラメント吸収糸による結節縫合で行い, 気管気管支の縫合不全予防に対しては大網を被覆することで対処した.病理学的には, 気管分岐部を越て浸潤した中分化扁平上皮癌で, 縦隔リンパ節転移があり3b期であったが, 術後3年半を経過し, 再発の兆候を認めていない.本症例のように縦隔リンパ節転移を伴う気管浸潤癌であっても, 治癒切除のできた症例では長期予後が期待されるので, 積極的な外科治療が望まれる.その際ECMOによる呼吸補助は, 術野の簡素化に有用で今後の普及が期待される.