北関東医学
Online ISSN : 1881-1191
Print ISSN : 1343-2826
ISSN-L : 1343-2826
群馬県における第一例目の生体肝移植の経験
大和 田進笠原 群生武市 卒之須納瀬 豊堤 裕史吉成 大介木村 千恵理川手 進富沢 直樹小川 哲史大矢 敏裕川島 吉之竹吉 泉小山 透浜田 邦弘徳峰 雅彦金子 浩章友政 剛森川 昭廣米村 公江富岡 昭裕門井 雄司吉川 大介後藤 文夫小林 圭子佐伯 武頼阿曽沼 克弘田中 紘一森下 靖雄
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 50 巻 2 号 p. 157-164

詳細
抄録

今回, 群馬県における第一例目の生体肝移植の成功例を経験したので, ドナーの選定や手術手技を中心に報告する.症例は16歳の男性で, 劇症高アンモニア血症と脳症で発症し, 内科治療により緩解期にあった.Type II citrullinemiaで生体肝移植術目的に小児科より紹介された.ドナーは45歳の父親, 血液型はcompatible, リンパ球クロスマッチは陰性で, 遺伝子診断はType II citrullinemia heterozygoteであった.中肝静脈を含んだ拡大肝左葉グラフトの予測グラフトレシピエント体重比 (GRWR) は0.95%であり, 肝切除率は29%であった.ドナー手術においてグラフト肝に胆管および血管の異常はなく, 肝血行遮断をせずに中肝静脈を含む拡大肝左葉グラフトを採取した.摘出グラフト重量は370gで, GRWRは0.86%であった.手術時間は7時間32分, 出血は516gであった.全肝摘出前に無肝期の門脈圧亢進を防ぐため一時的に門脈下大静脈シャントをおいた.piggyback法でレシピエント中・左肝静脈にドナー肝静脈を再建し, 門脈を再建した.肝動脈は顕微鏡下に再建した.最後にRoux-en Yに胆管空腸吻合を行い, 消化管を連続させた.冷阻血時間は1時間22分, 温阻血時間41分であり, 門脈遮断時間は0分であった.レシピエント肝は脂肪変性を伴う硬変肝で, 全肝重量は1300gであった.レシピエントの手術時間は11時間5分, 出血は1258gであった.患者は術後50日目に退院し, 現在元気に外来通院中である.また, ドナーは術後10日で退院し社会復帰している.

著者関連情報
© 北関東医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top