2020 年 58 巻 p. 9-19
本邦におけるがんゲノム医療の急速な発展とともに、遺伝診療が注目を集め、医療者および一般市民それぞれからのニーズが増加しているが、遺伝診療における遺伝カウンセリングなどの実施体制の整備は、大学病院やがんセンターなどの大規模病院に留まっている。中央市民病院においても2017年までは遺伝カウンセリングを含めた遺伝診療の実施体制は未整備であったが、産婦人科における遺伝学的検査を含んだ臨床試験の受託を契機に、診療体制の構築を行った。遺伝性乳癌卵巣癌症候群を対象疾患として診療を開始し、悪性腫瘍に対する治療薬でPD-1抗体薬であるペンブロリズマブ(キイトルーダⓇ)のコンパニオン診断としてMSI検査が導入された事から、リンチ症候群に対しての遺伝カウンセリングも行っている。今後保険適応となるがん遺伝子パネル検査などにより、遺伝性腫瘍の原因遺伝子が同定される可能性もある事から、対象疾患の拡大が見込まれる。