抄録
フッ素化合物の特徴は熱的,化学的安定性,低界面活性などにあるが,それらの特性はペルフルオロ化合物, またはペルフルオロメチル基を主体とする化合物において発揮される。さらに,近年,これらの特性を十分に活かすためには種々の官能基を導入し,物理的,化学的性質に多様性,柔軟性を持たせる必要が認められてきた。その結果,最近は,官能基を持つ化合物の合成,および反応に関する研究が活発化した。本稿では,それらのうち,比較的高分子に関連が深く,発展性も大きいと考えられる諸項目,すなわち,電解フッ素化ヘキサフルオロアセトン,チオアセトンほかのチオ化合物,さらには特殊エラストマーに関係したニトロソメタン,トリアジンなどの研究につき概説した。また最近,フッ化ビニリデンを低温で分散重合することにより興味ある物性が付与されることを認めたのでこれにもふれた。ほかにも注目すべき研究が多いが,なかでも,ペルフルオロオレフィンエポキシドの研究は,理論,応用両面で興味深く, 耐熱性高分子原料としてのエーテル, 芳香族フッ素化合物などの研究も無視しがたい。