近年、上部マントルで観察される~210km地震波不連続面あるいは~300km不連続面(それぞれLehmann-不連続面、X-不連続面と呼ばれることもある)の要因の一つとして、斜方エンスタタイトと高圧型単斜エンスタタイトの相転移が考えられている。本研究では、エンスタタイトの分子動力学シミュレーションにより、斜方エンスタタイトと高圧型単斜エンスタタイトの異方性について考察を行い、さらに低温型単斜エンスタタイトについても結果を報告する。Vp速度は、斜方エンスタタイト、低温型および高圧型単斜エンスタタイトで[100], [001], [010]方向の順で速く、強い異方性を持つことがわかった。一方Vs速度については、低温型単斜エンスタタイトではVp速度と同様な異方性が観察できたが、他の斜方および高圧型単斜エンスタタイトではさほど異方性は観察できなかった。