本研究では,Pusher現象を呈する重症片麻痺患者に対して麻痺側座面へのタオル挿入を含んだ段階的難易度設定による座位保持練習を実施し,その効果についてシングルケースデザインを用いて検討した.ベースライン期では,座位保持は不可能であった.介入初日,麻痺側座面下へのタオルの挿入と非麻痺側30㎝台上での前腕支持によって1分間の座位保持に成功した.同日,難易度を徐々に上げていき段階5の手支持なし条件での1分間の座位保持に成功した.次の日にも段階5に成功し, 3日目からは3分間の座位保持に成功した.介入中,運動麻痺などの機能障害に変化を認めなかったことから,今回の介入はPusher現象を呈する重症片麻痺者の座位保持能力を向上させるうえで有効に機能したものと考えられた.