心の諸問題論叢
Online ISSN : 1349-6905
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研究論文
ネグリ=ハート、ラカン、カントの狭間で
グローバル資本主義下における<協働>の構成
永澤 護
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2007 年 3 巻 1 号 p. 1-16

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抄録

本論は、グローバル資本主義下における<協働>の構成をテーマとする。本論では、この<協働>の構成は、相互的で対等なコミュニケーションを試みる実践として論じられる。また、この<協働>の実践は、個々人が他者との間で、生活の工夫や技を伝え合うこととして論じられる。この<協働>の構成は、<帝国>と呼ばれるネットワーク的権力のもとでのコミュニティーワークの構築という課題である。
I では、ネグリ/ハートの記述する「<帝国>」と<協働>の実践との関係を論じる。本論では、<帝国>を、個々人の生存を無際限に階層序列化する装置としてとらえる。ここで、「個々人が他者との間で、生活の工夫や技を伝え合うこと」という実践の狙いは、<帝国>の機能によって消されていた個の力を引き出すことである。
II では、<協働>が「顔」をキーワードにして論じられる。<協働>の過程は、他者の呼びかけへと応答する相互的な過程である。本論では、<転移>に関する洞察を視野に入れながら、この<協働>の構成過程が論じられる。
III では、<協働>の構成に向けた実践事例を論じる。結論として、<協働>の構成は、他者との出会いにおける私自身の<決意>の経験において現実化することが示される。

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© 2007 心の諸問題考究会
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