2005 年 20 巻 1 号 p. 45-56
本研究では, 臨床心理士の学級崩壊現象についての要因理解や介入した現象の実態, 効果的であった支援方法について検討した。留め置き調査と郵送調査によって, 全国の臨床心理士を対象に質問紙調査を行い, 285名から有効回答を得た。学級崩壊を現実に見聞きしたことのある心理士は全体で5割を超えており, 重要な支援対象となりつつあることが明らかとなった。また学級崩壊が慢性化した結果, あるいは崩壊に至るきっかけとして, 深刻ないじめがクラス内で生じていることが推測された。学級崩壊への効果的な支援策には, ティームティーチングだけでなく, コンサルテーションや心理療法のような臨床的個別支援も多く回答されていた。学級崩壊そのものの実態や介入ケースの説明には, 注意欠陥・多動性障害や学習障害の子どもの存在を多く挙げる回答が多かったが, 原因については子どもの情緒的な問題や社会性, 集団適応力の弱さが多く挙げられていた。これについては臨床心理士が, 学級崩壊クラスに存在する情緒的な原因によって衝動的に振る舞い, 落ち着きがない子どもを, 注意欠陥・多動性障害と見なす傾向があるからだと考えられた。