2020 年 87 巻 p. 41-49
本研究では、坪内雄蔵読本と第2期・第3期国定高等小学読本の一般用と女子用に採録された書簡文教材に着目し、その内容と文体を分析することをとおして、明治中期から昭和初期の国語科教科書教材における書簡文の特徴を議論した。その結果、坪内雄蔵読本から第2期・第3期国定高等小学読本までに採録された書簡文の特徴として、一般用と女子用では採録書簡文の内容や文章の構成要素には差異がみられたが、文体に差異はなく採録書簡文の大部分が候文体であった。また、この時期に採録された書簡文は、読本を読むことをとおして書簡文を書くことが求められていたことが看取できた。そして、それは特に第3期国定高等小学読本の女子用にみられ、今まで以上に書簡文における実用、形式が重視されたことが分かった。