2021 年 90 巻 p. 53-60
教育現場における漢字テストが持つ課題には、学習者の意欲が喚起されないという意欲に関する点と書字力に傾斜し漢字運用力を育成することまで視野に入れていない点が挙げられる。本稿の主眼は、この二つの課題を同時に解決する実践を開発し、検討することにある。そこで、小学校での漢字小テストに着目し、出題されている漢字の他用例を書き込んでいく「他用例書き込み」実践を考案し、その実践的検討を行った。
学習者は回数を重ねる度に書き込みの数を増やしていき、教科書等に未記載の用例で漢字を書けたり、作文でより多くの漢字を使用したりするようになったことに加え、漢字の書字力や読字力にも向上が見られた。学習者の変化の要因をM-GTAを用いて考察すると、意欲の高まりを契機とした循環作用が起き、漢字テストに向けた学習方法も語彙を増やす方向へと質の向上を見せていた。