抄録
肺移植手術は呼吸器外科分野において最も侵襲が大きく技術的に高度な手術の1つである。体外循環の取り扱いなど,通常の呼吸器外科手術ではあまり行わない手技が必要となる一方,気管支吻合,血管吻合など呼吸器外科医によって是非身につけたい技術を多く含んでいる。また術前評価から手術戦略,術後管理まで欧米の肺移植患者と比べても困難で複雑な症例が多く,技術だけではなく豊富な知識と経験,そして何より心臓外科,麻酔科,臨床工学技士,看護師,ICU医師,呼吸器内科医などとの高度なチームワークが要求される。本稿では脳死肺移植の手術に絞ってその概要を解説する。現在,東京大学医学部附属病院では年間30件以上の肺移植をコンスタントに行っているが,基本的にその技術はトロント大学の肺移植手技をベースに,日本の患者特性と当院での経験に基づき改良を加えたものである。