蚕糸・昆虫バイオテック
Online ISSN : 1884-7943
Print ISSN : 1881-0551
ISSN-L : 1881-0551
テクニカルレポート
繭糸繊度の遺伝解析と細繊度蚕品種の育成方法について
代田 丈志阿相 敏雄
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 77 巻 2 号 p. 2_153-2_158

詳細
抄録

 繭糸繊度に特徴のある蚕品種を育成する目的で,中国種の原種2系統を用いて繭糸繊度の遺伝解析と選抜法を検討した。その結果,(1)繭糸繊度とその他の計量形質の関係は繭層重および繭層歩合との間に正の相関があり,繭糸長との間に負の相関が認められた。(2)雑種強勢率は収繭量および繭層重,繭糸量で高くみられ,繭糸繊度では低く,繭重および繭層歩合,繭糸長については中間的であった。
 両親の平均値をもとにF1,F2およびBF1の繭糸長と繭糸繊度の推定を行ったところ,繭糸長と繭糸繊度の実測値と両親の平均値が大きく異なることはなかった。このことから,計算による推定法の有用性が確かめられた。また,粒内繊度偏差も両親の中間的な曲線を示すことも判明した。
 以上の結果から,近年における蚕種製造業者,養蚕業者ならびに製糸業者の要求に応えるためには育成方針にしたがって,繊度を細く,繭糸長を長くする方向で選抜を可能にする見通しが得られた。これに伴う結果として軽くなった収繭量などの計量形質は,雑種強勢によって補う方策が有益であると考察された。

著者関連情報
© 2008 社団法人 日本蚕糸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top