抄録
1) 東京附近に於ける品種園植栽の285品種の桑樹に就いて, 冬期間の樹色を色名帖により肉眼鑑定を行い4色群17色種に分類した。
2) 枝條を組織学的に観察した結果樹色の構成はつぎの要素によるものとした。
a) 木栓層の色と層数及びその厚さ b) 木栓皮層並びに初生皮層の色及びその厚さ c) 表皮細胞とくに角皮の色とその厚さ
3) 色名帖により選定した枝條の樹色と組織学的観察を綜合考察して, 桑樹の1年生枝條に於ける樹色は2)のa)及びb)の色の合色を以て基本色となし, これにc)の色を加色することによつて帯灰色を呈するものと推論したが, 後者は屡々枝條の方位とくに南北により樹色の色調を異にする。
4) 春季樹液の流動開始は固有の樹色を転色させるが, とくにG色群品種は顕著に緑色度を増加した。