日本蚕糸学雑誌
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酸性染料の吸着による野蚕糸のζ電位及び表面電荷密度の変化
野蚕糸の染色性に関する研究 II
藤井 明有本 肇坂部 寛
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1983 年 52 巻 1 号 p. 37-40

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抄録
野蚕糸のサク蚕絹, ヒマ蚕絹への酸性染料の吸着におよぼす静電的効果を直接確認するために, 染料アニオンの吸着による試料のζ電位の変化, およびζ電位より表面電荷密度を算出して得られた染料アニオンの吸着量について調べた。各試料の等電点よりも低いpH値の溶液中では, 染料濃度の増加に伴ないζ電位は正から負に反転し, 等電点よりも低いpH値で正の電荷を帯びている繊維表面に, 染料アニオンが静電的引力により多量に吸着することが示唆される。このことは, 染料アニオンの吸着量を算出した結果, pH値が等電点よりも低くなると各試料とも大幅に吸着量が増加したことからも確認できた。一方等電点よりも高いpH値の溶液中では, 染料濃度が増加してもζ電位は少し絶対値は増すが負のままで, 染料アニオンの吸着量も全般的に少なくなり, 負の電荷を帯びている繊維表面への染料アニオンの吸着が, 静電斥力に大きく影響されていることがわかった。
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© 社団法人日本蚕糸学会
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