64 巻 (2007) 10 号 p. 607-616
シクロデキストリン(CD)と環状エステル(ラクトン,ラクチド)を混合し,加熱することで,助触媒や溶媒なしにポリエステル,ポリラクチドが生成することを見いだした.各 CD を用いた際のポリマーの収率は,β-ブチロラクトンに対して α-CD≌β-CD≫γ-CD>(CD 無添加)の順に高い値を示した.一方,δ-バレロラクトンに対しては,β-CD>γ-CD≫α-CD>(CD 無添加)の順となり,CD の環状エステルに対する重合活性は CD の空孔の大きさとモノマーの構造に依存していた.β-CD と強く相互作用するアダマンタンを用いたところ,β-CD は環状エステルに対して重合活性を示さなかった.このことから,CD がモノマーを空孔内部に取り込むことによって重合がおこっていることがわかった.FT-IR 測定より,空孔に取り込まれたラクトンは,CD のヒドロキシル基と水素結合を形成し,活性化されていることが示唆された.生成したポリマーはポリエステル鎖の末端に CD を有した構造であり,ポリエステルが CD のグルコースの 2 位のヒドロキシル基にエステル結合で結合していることがわかった.生長過程において,ポリマー鎖の末端に結合した CD が空孔内部にモノマーを取り込み,水素結合を介してモノマーを活性化したのち,CD とポリマー鎖の間にモノマーが挿入されていることがわかった.これらの重合挙動を固体 NMR により観測した.