2007 年 64 巻 5 号 p. 286-293
Polystyrene(PS)-b-poly(methyl acrylate)(PMA)ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造(球状,棒状,板状)における,PS 末端セグメントの分子運動特性を ESR スピンラベル法により評価した.PMA の体積分率は 55 vol%以下とし,PS がマトリックス成分と見なせるブロック共重合体について研究した.相分離構造は小角 X 線散乱から確認し,観測温度範囲内において,相転移がないことを確認した.バルク PS において,末端セグメント近傍の自由体積は平均の自由体積の大きさより大きく運動性が高くなる.ブロック共重合体においても,PS 末端セグメントの運動性は,PS 内部セグメントに比べ高いことがわかった.さらに,内部セグメントと末端セグメントの運動性の差は,バルク PS の場合に比べ大きいものであった.つまりブロック共重合体のミクロ相分離構造内において,末端セグメントの運動性はバルクに比べより活性化されていることが明らかとなった.これは相分離構造内におけるポリマーのコンホメーションに関係すると考えられる.理論的,実験的にも,ミクロドメイン中において末端セグメントはドメイン中心部に多く分布していることがわかっている.この末端セグメントの濃縮効果によりその近傍で分子運動性が高くなったと考えられる.また効果がモルホロジーに強く依存し,末端の分子運動に影響を与えることもわかった.