高分子論文集
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一般論文
キレートをドープしたブロック共重合体のミクロ相分離構造の強磁場による配向化
安井 章文木村 史子木吉 司木村 恒久鄭 然桓櫻井 伸一
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64 巻 (2007) 5 号 p. 317-323

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抄録

本研究では,磁場配向性能をほとんど持たないアモルファス高分子のナノ集合組織を強磁場の作用により配向させることを検討した.この目的のために,非晶性のブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造をモデル系として利用した.具体的には,ポリスチレン-ポリエチレンブチレン-ポリスチレントリブロック共重合体である.この試料は熱力学的平衡状態ではポリスチレン(PS)がシリンダーを形成し,ポリエチレンブチレンがマトリックスとなる.これを選択溶媒を用いて溶液キャストすること(溶媒蒸発法)によって,金属キレートを PS ミクロドメイン相に選択的にドープすることに成功した.さらに,この選択溶媒を用いた溶液キャストを強磁場(12 テスラ)中で行うことで,金属キレートを選択的にドープさせることに加え,ラメラ状ミクロドメイン構造を基板に平行に高度に配向させることができた.ラメラ構造は,選択溶媒の作用によってできる非平衡な構造であり,PS 相のガラス化によって凍結されたものである.したがって,得られたラメラ構造を PS のガラス転移温度以上の温度で熱処理すると,熱力学的に安定なシリンダー構造に転移する.本研究では,PS ラメラ相に金属キレートが選択的にドープされているので,これを強磁場(12 テスラ)中で熱処理すると,ラメラが分裂して得られる PS シリンダーが印加磁場に平行に高度に配向した.このように,磁場配向性能をわずかにしか持たないアモルファス高分子であっても,明確な界面によってメソフェーズを形成している場合には,磁化率の大きな添加剤をメソフェーズに選択的にドープするなどの工夫によって,界面と磁場の相互作用の結果,対称性の破れとモードセレクションが起こり,ナノシリンダー構造を印加磁場に平行に配向させることが可能であることを初めて示すことに成功した.この結果は,単に磁場配向を達成したという実用的意義に留まらず,磁場中での対称性の破れとモードセレクションを実証できた点で,「ソフトマターの物理」の観点から有意義である.

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© 2007 公益社団法人 高分子学会
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