抄録
核酸アプタマーは抗体と同じく高い親和性で正確にタンパク質を認識することから,特定のタンパク質をターゲットとした医薬品としての応用が期待されている.しかし核酸アプタマーを医薬品として臨床応用するに当たっての問題点として,核酸由来の分子故に生体中のヌクレアーゼによって容易に分解されることが挙げられる.先の報告で筆者らはトロンビンアプタマーの 3′末端に poly(dA)テールを付加すると,元のトロンビンアプタマーと比較してヒト血漿中での半減期が約 3 倍延長され,また 3′末端に poly(dA)テールを付加したトロンビンアプタマーは元のトロンビンアプタマーよりもトロンビン阻害作用が向上するという研究成果について報告した.今回,アプタマーに付加するホモ核酸の種類とホモ核酸を付加する位置によってアプタマーの構造にどのような変化を与えるのかを CD 測定により調べたところ,高いトロンビン阻害作用を示したアプタマーはホモポリ核酸とアプタマー部位との相互作用による構造変化が小さいということで共通していた.また,トロンビン阻害作用が向上したアプタマーと元のアプタマーとではトロンビンに対する解離定数に大きな差がなかったため,ホモポリ核酸を付加したアプタマーのトロンビン阻害作用が向上する理由は解離定数のみでは議論できないと思われる.