2009 年 66 巻 9 号 p. 373-380
架橋度の異なる架橋スルホエチルセルロース(CL-SEC)膜を作製し,イオン交換容量(IEC),含水率,熱的化学的安定性,力学強度,プロトン伝導度およびメタノール透過係数(PM)を調べ,架橋効果の検討を行った.熱安定性は膜の架橋度による違いはほとんどなかったが,酸化安定性と吸水状態での引張強度は高架橋膜が優れていた.IEC と含水率の高い CL-SEC 膜は Nafion® 112 に匹敵するプロトン伝導度を示した.架橋により膜の含水率が減少するためプロトン伝導度は低下したが,メタノール透過性は抑制された.25℃ での CL-SEC 膜の PM とプロトン伝導度(σ)の比(σ/PM)は架橋度およびメタノール水溶液のメタノール濃度が高くなるほど大きくなり,高架橋度の膜は 1 M 以上のメタノール水溶液について Nafion® 112 の 5 倍以上大きな σ/PM 値を示した.CL-SEC 膜は高濃度メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜への応用の可能性があると考えられる.