抄録
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は,微生物によってバイオマスから合成可能な生分解性ポリエステルであるが,広範囲な用途に適用するためには,さらなる材料物性の改善と低コスト化が必要である.PHAの中でも3-ヒドロキシブタン酸(3HB)と分岐側鎖を有する3-ヒドロキシ-4-メチル吉草酸(3H4MV)からなる共重合体P(3HB-co-3H4MV)は,筆者らが開発を進める新規PHAであり,物性とコストにかかわる課題を克服しうる可能性を有する.これまでに,分岐脂肪酸前駆体を利用したP(3HB-co-3H4MV)合成法を開発し,3H4MV共重合体が優れた熱的特性・機械的特性を示すことを明らかにした.加えて,アミノ酸の一種であるロイシンが3H4MVの前駆体として利用できることを見いだした.このことから,生産宿主のロイシン代謝を改変することで,P(3HB-co-3H4MV)合成の単一原料化への展開が期待できる.