抄録
N-クロル化バクテリアセルロース(N-ClBC)を調製し,その極薄シート製造について検討した.N-ClBCはシアノエチル化(CE化),カルバモイルエチル化(CB化)およびN-Cl化の三段階の反応により調製された.置換度(DS) 0.05のCE化BC (CEBC)は40℃で約2.5時間アクリロニトリルをマイケル付加することにより容易に調製できた.CEBCのCB化はH2O2添加により室温で容易に進行し,CB化BC (CBBC)が調製できた.CBBCにNaClOを添加することによって,0℃,1時間でDS 0.05のN-ClBCが調製できた.厚さ10 µmのN-ClBCシート(DS 0.05)の乾燥引張強度は,BCシートの約1.7倍,湿潤引張強度はBCシートの約3.6倍となった.BCをN-Cl化することにより,厚さ3 µmの極薄シートを作製できた.N-Cl化による強度向上はN-Cl基による繊維間結合形成とシートの地合い向上によるものと考えられる.