2015 年 72 巻 1 号 p. 31-36
ジイソシアネート成分としてリジン由来ジイソシアネート(LDI),鎖延長剤として1,4-ブタンジアミン,ソフトセグメントとしてポリ(ε-カプロラクトン)ジオールを原料とするセグメント化ポリウレタンウレア(SPUU)を合成し,力学物性,および生分解性と分子鎖凝集構造の相関について考察した.短鎖脂肪族ジイソシアネートである1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)からなるSPUUを対照試料として用いた.対称性の高いウレア結合により構成されるハードセグメント(HS)は水素結合により凝集し,SPUUフィルムはゴム弾性を示した.立体的にかさ高く対称性の低いLDI系HSが形成するドメインは,BDI系HSドメインと比較して凝集力が弱く,昇温に伴い比較的低温で凝集解離して流動し,伸長によっても直ちにフラグメント化して塑性変形した.また,LDI系SPUUでは昇温に伴いソフトセグメントの再配列結晶化と融解が観測された.生分解特性は分子鎖凝集力に依存しており,分子鎖凝集力の低いLDI系SPUUにおいて生分解が確認された.