2015 年 72 巻 12 号 p. 721-725
樹幹内のリグニン量の分布についての報告は少数あるものの,リグニン高分子構造の分布に関する知見は存在しない.本研究では,50年生スギ樹幹の各部位から採取した木粉を用いて,独自の手法によりリグニン一次分子鎖を高度に保持するリグニン誘導体,リグノフェノールを取得し,樹幹内水平方向,繊維方向で,リグニン構造の分布パターン解析を行った.その結果,樹幹内において高分子リグニンのシームレスな構造変化が確認され,樹体中心下部において,一次分子鎖サイズが小さく,縮合型が発達しているが,樹体外層,上部に向かって一次分子鎖サイズが徐々に大きく,線状型へと移行する傾向が示唆された.