2015 年 72 巻 7 号 p. 433-439
種々のチエニル基を有するビニルエーテルのカチオン重合をHCl/ZnCl2,CH2Cl2中,-30°Cの重合条件で検討した.2-(3-チエニル)エチルビニルエーテル(3TEVE)の重合は,電子密度の高いチエニル基の2位の炭素のカルボカチオンへの求核攻撃により,六員環化合物を生成する連鎖移動反応が頻繁に起こり低分子量体しか得られなかった.一方,チオフェン環にカルボニル基を置換した,2-ビニロキシエチル2-チオフェンカルボキシレート(2TCVE)および2-ビニロキシエチル3-チオフェンカルボキシレート(3TCVE)は,チオフェン環のカルボカチオンへの求核攻撃が抑制され,いずれの重合においても,Mnは重合率に比例して増加し,それぞれMn=14,900;Mw/Mn=1.21,Mn=12,300;Mw/Mn=1.26と分子量分布の比較的狭い高分子量体が得られ制御カチオン重合が達成された.