2015 年 72 巻 7 号 p. 421-432
本報では,従来の石油由来の高分子合成において培った技術を利用して新しいバイオベースポリマーを創出することを目的として,低環境負荷な再生可能資源であるテルペンの精密重合系の開発について述べる.植物から豊富に採取されるモノテルペンであるβ-ピネンやd-リモネンは,脂環式骨格を有するオレフィンである.筆者らは,これらの植物由来化合物をモノマーとして用い,リビングカチオン重合やリビングラジカル共重合など,さまざまな精密重合系を開発した.とくに,β-ピネンのリビングカチオン重合により実用的にも十分な物性をもつバイオベースシクロオレフィンポリマーとなることを示した.また,テルペンのフルオロアルコール中でのラジカル共重合により高選択的1:2交互ラジカル共重合を見いだし,RAFT重合と組合せることで,天然高分子のような開始末端から生長末端まで配列の制御されたポリマーが得られることを示した.