抄録
本報は,積層構造型PVDF光触媒シートの作製およびその紫外光照射効果について述べている.PVDFシート上にTiO2薄膜を直接積層した二層構造と両者の間にバリア層としてSiO2薄膜を介在した三層構造について,紫外光を1000時間まで照射した場合のシートの透過率変化および光触媒活性を比較検討した.これらの構造では,有機PVDFシート上に無機薄膜を堆積するため,PVDFシート表面の親水化処理法の最適化を図った.二層構造シートでは,紫外光照射初期段階でTiO2中に残存するチタンキレート錯体の光縮重合による膜収縮が生じPVDFとの界面にひずみが生じるため,また,さらに長時間の照射を行うとTiO2の光触媒作用によりPVDFシートにチョーキングが生じるため,可視光領域で透過率の減少が見られた.一方,バリア層を導入した三層構造シートでは,これらの影響がバリア層によって抑制されるため透過率の減少はほとんど生じないことを明らかにした.